生き生きとした風に乗って 太田雅孝
新しい時代が必ずしも良い時代であるとは限らないように、新しい理事会が前の理事会より優れたものになれるとも限りません。ですが、時代とともに日本詩人クラブも変わってきたように、新しい理事会も未来にチャレンジすることを恐れず、一歩でも豊かな〈詩界〉に貢献できるような方向へと向かっていきたいと思います。
改めて初心に返る気持ちで、『会員名簿』の2頁にあります規約第2章(第3条)を見ますと、〈本会は、和暢友愛の精神をもって詩及び詩学の興隆、国語の醇化に努め、日本文化の進歩に寄与するとともに、詩の国際的交流を促して、世界平和の確立に貢献することを目的とする〉という基本理念の言葉があります。これまでの会長や理事長は、この言葉を何度も引用してきましたが、若い会員の中には、この〈和暢(わちょう)〉という言葉の意味が分からないという方が多いと思います。そこで辞書を引いてみますと、穏やかでのどかなこと、というような意味が出ております。語弊があるかも知れませんが、和気あいあい、といった方が現代の方々には分かりやすいのではないでしょうか。
私が会長を務めさせていただく間も、肩肘張らずに、和気あいあいとした会員同士の交流を図ると同時に、これまでの日本詩人クラブらしく、絶えず詩や批評に対する研鑽努力に務め、伝統と革新の精神に敬意を払い、国際感覚を大切にしていきたいと願っております。
そうした意味でも、ここに誇りを持って挙げておきたいこととして、近いうちに、これまで隔年毎に刊行してきた『日本現代詩選』という詩作品のアンソロジーと対になるように、会員の皆さまのお力に依る『詩界論叢』という批評や詩的エッセイのアンソロジーが、同じく隔年で前者と交互になる形で、新たに創刊されます。これは、日本詩人クラブだけのことではなく、日本の〈詩界〉全体にとって、歴史的な出来事であると言っても良いでしょう。日本の現代詩の世界を推進していく車の両輪として、いつまでも詩的活力を生み出してゆく力となるものです。
これからの2年間は、長いようで短いものと思われますが、近未来の目標としての日本詩人クラブ創立80周年に向けて、詩を愛する方々の大いなる期待という、衰えることのない生命力に溢れる風に背中を押されつつ、着実に職務を果たしていきたいと思います。どうか新しい理事会のフル回転の仕事ぶりを温かくお見守り下さいますよう、心からお願いして、私の挨拶とさせていただきます。